わたしがホテルでアルバイトを始める3年前に起きたSデパート火災。
これについてわたしはほとんど知らない、わからない、
というか、SデパートがM社長の会社の所有だったことさえ知らなかった。
ホテル内でそのことに触れる人はいなかったし、M社長にもまったく暗い影がなく、ごく自然というかふつうに日常が過ぎて行っていたからだ。
無理して隠していたということも無い。
今から考えると不思議なのだが、社長もホテルの人たちも、どこまでも真っ直ぐだった、と、そういう言い方しかできない。
しかし、あれほどの惨事だから、当然、Sデパート火災のことは知っていた。
(火災そのものについてはウィキぺディアが詳しい。)
実は、火災が起きる数カ月前、わたしはSデパートの前を通ったことがあった。
その時は夜で、ナント、デパートの前でお化けの扮装をした人が数人、(地下にあった?)お化け屋敷の呼び込みをやっていた。
信じられない光景だった。
なんでそんな時間にそんな場所で?
怖(こわ)がらせるのではなく明るい感じの呼び込みだったのだが、少し動悸(どうき)がするほどにショックだったのは、明るい照明に満ちているのに、その間(あいだ)間(あいだ)に暗黒があるというか、真っ暗な部分(と見えた)がいくつかあったからだ。
少し胸が締め付けられるような気持がして、 あわててその場所から逃げた。
Sデパート火災のニュースを見たとき、最初に浮かんだのはあのお化け屋敷とお化けの?呼び込みさんのことだった。
これはウィキなどを見て最近知ったのだが、Sデパートとその周辺は江戸時代には墓場で、刑場や火葬場もあったところなのだという。
(刑場には新撰組隊長・近藤勇の首が京都にさらされたあと、ここでさらされ、それから後は行方がわからなくなった、という話も伝わっているとか。)
なぜそんな場所にM社長がSデパートを建てたのか、不思議だったが、そこは大手映画会社の創業者の事業を引き継いだものらしい。
もともとは歌舞伎座だったのだが、やはり縁起が良くないと思ったのか、歌舞伎座は新歌舞伎座として別の場所に建設、
その跡地に建てられたのが雑居ビルの先駆けというべきSデパートだったのだ。
しかし、大きな墓場と刑場と火葬場が同じところにあったなんてのは、いかにも大阪らしいディープさというか、ちょっと想像を絶する。
明治になって墓場、刑場、火葬場は移転。
しかし、繁華街(ミナミ)の一角であるにも関わらず、土地の買い手がいなかったために大阪市は興行を誘致。
そこで建てられたのが歌舞伎座だった。
ちなみに吉本興業の本拠地もここだとか。
火災の後、この一帯は多くの怪談話が語られ、今でも尾を引いているようだけれど、それは大阪の人たちの集合無意識か?
わたしは20~30年くらい前に何かの読んだ雑誌か本?で読んだ、7階にいて助かった人の体験談が最も怖かった。
それは、火災で多くの人がパニックに陥(おちい)って逃げまどっていた時、
ある方向から「こちらだ」としっかりした声が聞こえて、周りの人たちは一斉にそちらのほうに走って行ったのだが、
その人だけは、(その声が)なにかおかしい、と感じてその声から逃げるように逆の方向に走ったのだという。
結果、声のした方に行った人たちは全員死亡し、その人は助かったのだとか。
この話を読んだときはさすがにゾッと・・・・、
おっと、窓もドアも閉(し)めているのに居間との間のふすまがガタガタと・・・、
話の方向を変えよう。(笑)
このデパート火災で亡くなったのは118人。
その多くが7階にあったアルサロ(アルバイトサロン)の女性や従業員だった。
アルサロというのは、素人女性がアルバイトホステスとして接客をする、いまのキャバクラに似た形態の店だった。
ただ、今のように若い未婚の女性ばかりというわけではなく、その多くは子どもを抱えたシングルマザーだった。
火災後の記者会見で、気丈に応対していたM社長も、記者からそのことを指摘されるとたまらず泣いたという。
Sデパートは多くのテナントが入る、雑居ビルの先駆けのような建物だったのだけれど、もっとも多くの死者を出した7回のアルサロはM社長の会社の直営だった。
そのアルサロは客が店に支払う料金は驚くほど安かったらしい。
わたしがそれで思ったのは、
その店もチップ制だったのかな?
ということ。
お客が店内で女性やボーイにチップを渡すことが認められていたのではないか?
これはあくまでもわたしの想像にすぎないが・・・。
もしそうなら、その店もお金儲けのためだけではなく、従業員の生活も考えたものだったと思う。
サービス業に携わる従業員にとって、(店が干渉しない)そういうチップ制はほんとうに有難いから。
ただ、お上(かみ)にとっては面白くないだろう。(ZEIKINの問題ね。)
火災の原因はデパートに入っていた大手衣料品スーパーの工事に伴うもの(煙草の火の不始末?工事の火花?)といわれたが(出火元はそのスーパーの階)、タバコの火の不始末がいわれた現場監督も裁判の結果無罪となり、出火原因は不明となっている。
・・・・・長くなった。続きは次回に。
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ネットにこんな動画があった。
[http://:title]
・・・やはりチップを認めていたんだなァ。
わたしがホテルで働き始めたのはその火災の3年後。
社長にとっては苦しい時期だったと思うのだが、そんなそぶりは全くなかった。