宵(よい)の明星(みょうじょう)、金星(きんせい)が輝(かがや)いている。
そして、東(ひがし)の空(そら)には木星(もくせい)が
薄雲(うすぐも)のうしろにぼんやり、
と思(おも)ったら、すぐに出(で)てくれた。
買(か)い物(もの)帰(がえ)りの遅(おそ)い時間(じかん)になると、雲(くも)も晴(は)れて、よりくっきり。
木星(もくせい)を)見(み)ていると心(こころ)が落(お)ち着(つ)く。
誰(だれ)もいない公園(こうえん)で木星(もくせい)に向(む)かって頭(あたま)を垂(た)れていると、大切(たいせつ)なことを教(おし)えてくれているような気持(きもち)になる。
わたしは密(ひそ)かに木星を木星(もくせい)大菩薩(だいぼさつ)と呼(よ)んでいる。
46億(おく)歳(さい)といわれる木星と比(くら)べると、わたしの人生(じんせい)なんて存在(そんざい)したか、しなかったかほどの一瞬(いっしゅん)でしかないだろう。
それでも、木星も無常(むじょう)からは逃(のが)れられない。
太陽(たいよう)の寿命(じゅみょう)はあと50億年(おくねん)くらいで、太陽の最期(さいご)の前(まえ)の膨張(ぼうちょう)で地球(ちきゅう)は太陽に飲(の)み込(こ)まれる、というから、木星の寿命もそれくらいか、
と思(おも)ったら、太陽に飲み込まれるのは地球までで、木星は無事(ぶじ)?(^^;)
しかし、この世(よ)のものにはすべて終(お)わりがある以上(いじょう)、木星もいつかなくなることは間違(まちが)いない、
のだろうな。
こんなこと考(かんが)えて木星さんには悪(わる)いけど。(笑)
1人(ひとり)1宇宙(いちうちゅう)の唯識(ゆいしき)論(ろん)によると、わたしが見ている木星はわたしの宇宙(うちゅう)の46億歳の木星であって、わたしがいなくなるとわたしの見ている木星も無くなるらしい。
けど、それ以上(いじょう)に、わたしも木星も、一瞬(いっしゅん)、一瞬に、消滅(しょうめつ)しているようなのだ。
人間(にんげん)には眼識(がんしき)、耳識(じしき)、鼻識(びしき)、舌識(ぜつしき)、身識(しんしき)、意識(いしき)、末那識(まなしき)、阿頼耶識(あらやしき)という八識(はちしき)があって、その八識すべてが一瞬(いっしゅん)、一瞬の消滅(しょうめつ)を繰(く)り返(かえ)しているという。
したがって、人間には常住(じょうじゅう)、不変(ふへん)の我(われ・が)はない、ということになるのだけれど、世界(せかい)も諸行無常(しょぎょうむじょう)なので、世界にも常住(じょうじゅう)の本体(ほんたい)というものは無(な)く、自分(じぶん)も、環境(かんきょう)を含(ふく)めた世界も無自性(むじせい)、空(くう)なのだという。
ではなぜ一瞬、一瞬の消滅(しょうめつ)を繰(く)り返(かえ)しているのに、世界は存続(そんぞく)し、われわれが業(ごう)を持(も)った人間として生(う)まれているのか、というと、
過去(かこ)自体(じたい)は消(き)えても、そのもの自体の情報(じょうほう)、出来事(できごと)、行為(こうい)、考(かんが)えなど、すべての情報(じょうほう)が阿頼耶識(あらやしき)に貯蔵(ちょぞう)され、その情報がずっと相続(そうぞく)されて輪廻転生(りんねてんせい)し、われわれ自身(じしん)、また業(ごう)として出現(しゅつげん)する、というのが唯識論(ゆいしきろん)の考えらしい。
唯識論(ゆいしきろん)というのはすごいけど、読(よ)んでいると、もう難(むつか)しいのなんの。
だからどうなんだ、ってイヤになって来(く)る。(笑)
今(いま)さらながら、奈良時代(ならじだい)、平安時代(へいあんじだい)、鎌倉時代(かまくらじだい)の日本(にほん)の仏教(ぶっきょう)のレベルの高(たか)さに驚(おどろ)かされる。
それにしても、行為(こうい)のすべてが情報(じょうほう)として阿頼耶識に貯蔵され、過去(かこ)から現在(げんざい)未来(みらい)へと輪廻転生(りんねてんせい)する、というのはコワイねえ。
悪いことをしてはいけない、ということだ。
諸悪莫作(しょあくまくさ) 衆善奉行 (しゅぜんぶぎょう)
悪(わる)いことをしてはいけません、善(よ)いことをしましょう (法句経(ほっくぎょう))
聖徳太子(しょうとくたいし)の遺言(ゆいごん)として伝(つた)えられている。
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面白(おもしろ)いのは、
「情報(じょうほう)は決(けっ)して消滅(しょうめつ)しない。」
ということが物理学(ぶつりがく)(量子力学(りょうしりきがく))の大原則(だいげんそく)になっていることだ。
かつて、例外(れいがい)として、ブラックホールの蒸発(じょうはつ)によってブラックホールに飲(の)み込(こ)まれた物質(ぶっしつ)の(ブラックホールの表面(ひょうめん)に書(か)かれていた)情報も消滅する、と考えられたことがあったが、今ではそれも否定(ひてい)されているという。
^^