「6月も終わりの暑い夜、

扇風機(せんぷうき)にあたりながら寝ていると、布団(ふとん)の横を1匹の黒い虫がうろうろしている。

 

わたしが起き上がると、なぜか虫はわたしの目の前で動きを止めて、そのままj。じっとしている。

よく見れば、

ゴミムシ。

 

再び動き出したが、動きがのろいので簡単に捕(つか)まえることができた。

 

で、捕まえたまま、ベランダから下へポイ。

 

それでオシマイ、と思ったら、次の日の夜、また家に侵入(しんにゅう)。

再(ふたた)び捕まえて、今度はベランダの反対側(はんたいがわ)、通路(つうろ)の所から,外に向けてポーィ。

遠くに放(ほう)り投(な)げてやった。

 

ったく。

と思っていたら、次の日も・・・。

 

今度は通路を少し移動(いどう)してポイしたけど、ちょっとイヤな予感が・・・。

 

案(あん)の定(じょう)、来(き)た。

4日目の夜。

今度はコーヒー用にしていた古いマグカップの中に入れ、拡大レンズでフタをしてやった。

 

youtube.com

 

スマホのライトで照(て)らして撮影(さつえい)していると、少しイライラした様子(ようす)なのが面白い。

 

懲(こ)りたらもう来るんじゃないよ、と言って、例のごとく、“追放(ついほう)"。

 

ところが、次の日、遅(おそ)い夕食(ゆうしょく)を食べていると、テーブルの上に・・・。

しつこいなんてもんじゃない。

 

そして、わたしの目の前に来ると、

「飛べるんだよ~。」

とばかりに飛びあがって、壁(かべ)にぴたりと張(は)りついた。

 

        

 

ところが垂直(すいちょく)の壁は苦手(にがて)なのか、

しばらくすると、ポテッと下に落(お)ちた。

 

神出鬼没(しんしゅつきぼつ)のくせに、なんと、どんくさい。

 

しかし、このままでは、わたしん家がこのゴミムシの定宿(じょうやど)のようになってしまう。

 

うーー、こうなったら仕方がない、

覚悟(かくご)しろよ!

 

飼(か)ってやる。(^^)

と、まあ、カブトムシを飼うような感覚(かんかく)でケースに入れたのだけれど、

 

カブトムシのように簡単では(かんたん)ではなかった。

 

最初はケースの中を動き回り、時には少し飛んだりもしていたのだけれど、逃げられない、と分かるや、姿(すがた)を見せなくなった。

 

まあ、そのうち出てくるだろう、と、エサとなりそうなものを置いてやり、上から水も吹きかけてやって、うっちゃっておいた。

 

丸一日たって様子(ようす)を見に行くと、やはり姿はなく、エサも食べていない。

 

姿を見せないのはともかく、エサを食べないのは困(こま)るなァ、と思って、ケースを持ち上げて、下から、横から見たけれど、どこにもいない、というか、見えない。

エサを取(と)り換(か)えて、水をシュッシュッとケースの中に吹きつけて再び放置(ほうち)。

 

そんなことを繰り返して4日目の夜、

エサを全く食べないのはやばいなあと思って、ついに飼育(しいく)を放棄(ほうき)。

ケースのフタを外すと、ドアの外に出しておいた。

 

まだ生きているのなら、逃(に)げな。

 

ケースは次の日にベランダに移(うつ)してフタを外(はず)したままにしておいた。

 

それから2日ほどは姿を見せず、

懲(こ)りたか死んだか、もう来ることはないだろうな、と思っていると、

 

このあいだの夜、散歩に出ようとドアの外に出たら、通路の溝(みぞ)のところに、いた。

 

まだこんなところにいたんかい。

 

溝の前にしゃがみこんでしばらく見ていた。

 

まったく動こうとしないので、ベランダまで行って、ケースに入っていたエサを少しつまんで持ってきて、目の前に置(お)いてやった。

 

すると、向(む)きを変えると、エサを尻目(しりめ)にこれまでに見たことのない速(はや)さで走って逃げて行った。

 

そんなにも飼われるのがイヤだったのか。

 

わたしはあきれて走り去っていくゴミムシを見ていた。

 

虫なら、エサがあって生きて行ける環境(かんきょう)があれば十分(じゅうぶん)だろうと思っていたが、どうも違うようだ。

 

虫だって自由が欲しい???

エサだけあればいいってもんじゃない???

 

一寸(いっすん)の虫にも五分(ごぶ)の魂(たましい)、とは言うけどねえ。

 

ちょっと考えさせられてしまった。(笑)