扇風機(せんぷうき)にあたりながら寝ていると、布団(ふとん)の横を1匹の黒い虫がうろうろしている。
わたしが起き上がると、なぜか虫はわたしの目の前で動きを止めて、そのままj。じっとしている。
よく見れば、
ゴミムシ。
再び動き出したが、動きがのろいので簡単に捕(つか)まえることができた。
で、捕まえたまま、ベランダから下へポイ。
それでオシマイ、と思ったら、次の日の夜、また家に侵入(しんにゅう)。
再(ふたた)び捕まえて、今度はベランダの反対側(はんたいがわ)、通路(つうろ)の所から,外に向けてポーィ。
遠くに放(ほう)り投(な)げてやった。
ったく。
と思っていたら、次の日も・・・。
今度は通路を少し移動(いどう)してポイしたけど、ちょっとイヤな予感が・・・。
案(あん)の定(じょう)、来(き)た。
4日目の夜。
今度はコーヒー用にしていた古いマグカップの中に入れ、拡大レンズでフタをしてやった。
スマホのライトで照(て)らして撮影(さつえい)していると、少しイライラした様子(ようす)なのが面白い。
懲(こ)りたらもう来るんじゃないよ、と言って、例のごとく、“追放(ついほう)"。
ところが、次の日、遅(おそ)い夕食(ゆうしょく)を食べていると、テーブルの上に・・・。
しつこいなんてもんじゃない。
そして、わたしの目の前に来ると、
「飛べるんだよ~。」
とばかりに飛びあがって、壁(かべ)にぴたりと張(は)りついた。
ところが垂直(すいちょく)の壁は苦手(にがて)なのか、
しばらくすると、ポテッと下に落(お)ちた。
神出鬼没(しんしゅつきぼつ)のくせに、なんと、どんくさい。
しかし、このままでは、わたしん家がこのゴミムシの定宿(じょうやど)のようになってしまう。
うーー、こうなったら仕方がない、
覚悟(かくご)しろよ!
飼(か)ってやる。(^^)
と、まあ、カブトムシを飼うような感覚(かんかく)でケースに入れたのだけれど、
カブトムシのように簡単では(かんたん)ではなかった。
最初はケースの中を動き回り、時には少し飛んだりもしていたのだけれど、逃げられない、と分かるや、姿(すがた)を見せなくなった。
まあ、そのうち出てくるだろう、と、エサとなりそうなものを置いてやり、上から水も吹きかけてやって、うっちゃっておいた。
丸一日たって様子(ようす)を見に行くと、やはり姿はなく、エサも食べていない。
姿を見せないのはともかく、エサを食べないのは困(こま)るなァ、と思って、ケースを持ち上げて、下から、横から見たけれど、どこにもいない、というか、見えない。
エサを取(と)り換(か)えて、水をシュッシュッとケースの中に吹きつけて再び放置(ほうち)。
そんなことを繰り返して4日目の夜、
エサを全く食べないのはやばいなあと思って、ついに飼育(しいく)を放棄(ほうき)。
ケースのフタを外すと、ドアの外に出しておいた。
まだ生きているのなら、逃(に)げな。
ケースは次の日にベランダに移(うつ)してフタを外(はず)したままにしておいた。
それから2日ほどは姿を見せず、
懲(こ)りたか死んだか、もう来ることはないだろうな、と思っていると、
このあいだの夜、散歩に出ようとドアの外に出たら、通路の溝(みぞ)のところに、いた。
まだこんなところにいたんかい。
溝の前にしゃがみこんでしばらく見ていた。
まったく動こうとしないので、ベランダまで行って、ケースに入っていたエサを少しつまんで持ってきて、目の前に置(お)いてやった。
すると、向(む)きを変えると、エサを尻目(しりめ)にこれまでに見たことのない速(はや)さで走って逃げて行った。
そんなにも飼われるのがイヤだったのか。
わたしはあきれて走り去っていくゴミムシを見ていた。
虫なら、エサがあって生きて行ける環境(かんきょう)があれば十分(じゅうぶん)だろうと思っていたが、どうも違うようだ。
虫だって自由が欲しい???
エサだけあればいいってもんじゃない???
一寸(いっすん)の虫にも五分(ごぶ)の魂(たましい)、とは言うけどねえ。
ちょっと考えさせられてしまった。(笑)